COLUMN

2021.11.21

相続

生前贈与が近い将来に廃止?

年間で110万円までの贈与は贈与税はかからないことをご存知の方は多いのではないでしょうか。

将来、相続税が発生する人が3人の子供に年間110万円を10年間贈与した場合、3,300万円(110万円×3人×10年)の相続財産を無税で減らすことができます。(暦年贈与)

さらに近年ではデフレ経済対策の一環として、政府は高齢者の保有する金融資産を消費活動が活発な若年層に渡しやすくするために様々な贈与の特例制度を設けてきました。

相続時精算課税制度、住宅資金の贈与、教育資金の贈与、結婚・子育て資金の贈与、これらの贈与の特例制度を使えば年間110万円を超える贈与を受けても贈与税がかからない仕組みが設けられています。

政府としては贈与税を課税するよりも、高齢者に偏りすぎた金融資産を若年層に回しやすくする→若年層に回った金融資産が消費に回る→経済が活性化するというシナリオを描いていました。

政府の思惑も追い風の中、暦年贈与を行ったり、特例制度を上手く組み合わせることで、生前贈与はこれまで相続税対策の王道的な役割を果たしてきました。

 

しかし、この暦年贈与が近い将来なくなり、特例制度も縮小される可能性が高くなりました。

2021年度の税制改正大綱で生前贈与廃止が言及されました。

「資産の移転タイミングによる意図的な税負担の回避」を防止するために「暦年贈与を見直す」とあります。

正式に改正が決まった訳ではありませんが、近い将来の改正点は以下の2点と予想されます。

①110万円の贈与税の無税枠がなくなる。(暦年贈与の廃止)

②持ち戻しの期間が現在の3年から10年程度(未定)に延長される。
現行税制では、相続税逃れを防ぐために「亡くなる3年前の間に行われた贈与は無効となり、相続税の対象となる」という規定があります。いわゆる持ち戻しと呼ばれるものです。諸外国では持ち戻しの期間は、ドイツ10年、フランス15年、イギリスやアメリカに至ってはそもそも暦年贈与の無税枠がなく、すべての生前贈与分を持ち戻して相続時に課税する制度となっています。

 

改正後は、生前贈与を利用した相続税対策が難しくなりそうです。

これまで子供のみに生前贈与されていた方は、子供の妻や孫にも生前贈与するなどして、改正までの残された時間で最大限生前贈与を活用しましょう。

もともと贈与税は相続税を補完する役割ですが、今後は相続税と贈与税が一体化される方向性です。

相続税対策は先々考えていこうと考えている方は、今すぐに相続税対策を検討することをお勧めします。

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