2019.06.10
相続
2018年7月に民法の相続分野(相続法)が約40年ぶりに改正されました。
社会問題とされている高齢化社会と相続をめぐる紛争の対策として、特に残された配偶者の住まいと暮らしに関する権利保護が強化されました。
相続法改正の目玉の1つである配偶者居住権の創設(2020年4月1日施行)の概要を確認しておきます。
父、母、子の3人家族、父の遺産が自宅3,000万円と預金2,000万円の合計5,000万円の場合を例に考えます。
父が亡くなった場合、仲の良い母と子であれば、子は「母がすべて相続していいよ」ということになるでしょう。この場合、特に問題ありません。
しかし、母と子の仲が悪い場合はどうでしょう?
母と子の法定相続分はそれぞれ1/2ずつとなりますから、母がこれからも住み続けたい自宅3,000万円を相続しようとすると、母の相続分2,500万円(5,000万円×1/2)を超えてしまします。母は預金2,000万円の相続を諦めるだけでは足らず、子に代償金として500万円を差し出さなければならいことがありました。
今回の相続法の改正は、このような問題に対応しました。
配偶者居住権の創設により、「所有権」としか権利化されなかった自宅不動産が「所有権」と「居住権」に分離対応が可能となったのです。
上記の例で、仮に自宅3,000万円の評価の内訳が所有権1,500万円、居住権1,500万円とします。
母はこれからも住み続けたい自宅の居住権1,500万円と預金1,000万円の合計2,500万円を相続できるようになったのです。母は生きている間ずっと自宅に住み続けることができますし、生活資金1,000万円も確保できるようになりました。
一方、子は母の住む自宅の所有権1,500万円と預金1,000万円の合計2,500万円を相続することになります。母が亡くなった後、自宅の居住権は消滅しますので、父の相続で取得した所有権に基づいて売却など自由に処分することができます。
このように、親子の仲が悪い場合や相続人が後妻と前妻の子である場合などであっても、配偶者は住まいと老後の生活資金を相続しやすくなったことが特徴です。
ただし、この配偶者居住権は当然に配偶者に相続される訳ではなく、遺言、遺産分割、審判などにより相続することになります。遺産に自宅がある場合は、従来の争族対策と同様、遺言で配偶者居住権を配偶者に相続させる遺志を残しておくことが望まれます。